今回はBtoBサービス業(受託開発、デザイン、コンサル等)の資金繰りと納税について解説していきます。サービス業として大きく分類してしまっていますが、ここでは主に労働集約型モデルで、人が作業をすることによってお客様から報酬を受け取る種類の業種をまとめています。また、BtoCとBtoBでは事業モデルが大きく異なりますので、BtoBに絞って解説していきます。

BtoBサービス業(受託開発、デザイン、コンサル等)の特性から特に納税額に影響を与える事項としては以下のようなものがあります。

・人件費又は外注費が経費の中で大部分を占める

・受注から納品までのリードタイムが長いことがある

・人件費又は外注費が経費の中で大部分を占める

今回対象としているBtoBサービス業では、経費の中で人件費が大部分を占める可能性が高くなります。ここで、人件費ではなく外注を多く使うモデルの場合には、税額の発生の仕方が大きく異なりますので、ここでは分けて記載していきます。

 ①人件費が多い場合

  人件費が多い場合、消費税の納税額が高額になります。こちらは、消費税の納税額は、 売上入金時に預かった消費税から、経費支払時に支払った消費税を控除して算定します  が、人件費については消費税がかかっていませんので、経全体の中で控除できる消費税 が小さくなるためです。そして、給与のみならず社会保険料等の法定福利費についても同様に消費税はかかっていませんので、人関連の経費(通常これらすべてを含めて人件費といいます)全般が消費税のかからない経費となり、さらに、多額の設備投資も要さないことが多いので、瞬発的に消費税が安くする事もあまりないことが多くなっています。

  こちらは、会計事務所やコンサル会社など共通事項となりますので、消費税額が高いことは事前に想定の上事業を進めることが必要になります。

 ②外注費が多い場合

  一方で、人件費に変えて外注で事業を回している場合になると大分状況が異なります。外注費についてはお給料と異なり、消費税を乗せて支払うことになるため、支払済みの消費税額が大きくなり、通常の経費と同様に消費税が多額になるという事はありません。一見すると外注費とした方が有利なようにも見えますが、外注費の金額設定方法によりますので、ご注意ください。仮にお給料で支払う場合と同額で外注出来る場合であっても、その同額に対して消費税を上乗せして支払う事が一般的です。むしろお給料のように継続支払いを約束しない点から、より高くなる事が通常でしょう。その場合には、会社から支出している金額はお給料の場合より多くなりますので、税額自体は安くなっても、会社からのキャッシュアウトとしては、総額で増えている可能性が高いので、この点はご留意ください。

お給料の場合外注費の場合
基本報酬200,000200,000
消費税額20,000
社会保険料(13%で試算)26,0000
合計支出額226,000220,000

上記の通り、基本報酬が同額でかつ社会保険料を加味してもお給料の方が少し高いのみとなります。外注費の消費税額部分は、消費税の納税時に控除出来るものですので、実際の比較としては、226,000円と200,000円で比較して頂くことが正確になります。ただ、実際は、外注費の場合、同じ業務で基本報酬がお給料の場合と同額ということはありませんので、外注金額決定時には、ご注意くださいませ。

また、BtoBサービス業では『人』に仕事が付くことが多いため、外注のみではノウハウが社内に蓄積せずに、会社としての発展の妨げになる可能性があります。人件費とするか外注費とするかは、BtoBサービス業においては永遠のテーマにはなりますので、税額の観点からのみで外注費が良いという結論を出すことは出来ませんのと、人件費か外注費かについては、税務上でも判断が入りますので、契約書の文言のみでいずれかを自由に選択出来ません。詳細は大きな論点になりますので、別途独立記事として記載させて頂きますので、ご参照頂けますと幸いです。

・受注から納品までのリードタイムが長いことがある

 受託開発や成功報酬型モデルの場合には、受注して実際に社内でコストが発生してから、売上の確定及び入金までの間に時間を要することが多々あります。作業が長期にわたる場合ですと、着手金や中間金を受け取る事が慣習として成立している場合もありますので、資金繰りの観点からは、それらを活用したり、金融機関からの融資を用いたりして入金までの資金繰りを行う事も可能かと思います。

 また、決算日時点で未納品の成果物がある場合等については、その支出は経費としては計上せずに仕掛品として、納品及び売上確定時のコストになるように繰り延べることが必要になります。

 上記を踏まえると、必ずしも悪い方向のみではありませんが、中間金や借入金等による本来の売上以外の入金のタイミングと、実際の売上のタイミング、経費の支出時期と損益計算上で経費となるタイミング、等々、入金及び出金のタイミングと損益計算上の収入経費のタイミングが大きくずれる可能性が高くなっています。この場合、当然に入金と納税のタイミングもズレる、又は過去に既に入金済みである可能性が高くなります。

 会計処理に大きく影響を受ける部分になりますので、決算前には納品予定を踏まえて納税予想をしっかり顧問税理士と詰めておくことが重要になるかと思います。

Previous post 赤字なのに税金が高い【EC、卸売編】
Next post 赤字なのに税金が高い【BtoCサービス業編】