今回はBtoCサービス業(家事代行、美容院等)の資金繰りと納税について解説していきます。BtoCサービス業として、一般顧客に対するサービスを組織として提供する事業形態を想定しています。基本的にはサービスを提供するのは人という前提でおりますので、BtoBのケースと近くは有りますが、売上の形態が大きく異なりますので、分類させて頂きました。ここで、想定しているBtoCサービス業では、入金や支払その他業績についても急激な増減は発生しずらい業種になります。そのため、他の業種と比較すると納税額についての予想もしやすく、昨年度の納税額も参考になることが多いと考えられます。
その中でもBtoCサービス業(家事代行、美容院等)の特性から特に納税額に影響を与える事項としては以下のようなものがあります。
・チケット等の前受金
・設備投資による消費税額の変動
・借入金
・チケット等の前受金
継続利用者向けに販売する回数券であったり、前払いチケット等、特に最近ですとお客様側の支払い方としてサブスクの形で月額定額で頂き、使い切れなかった分を翌月に繰り越せるような形でサービス提供する事業者も増えてきているかと思います。
本来、サービス提供前に代金を回収できるので、資金繰りの観点から非常に有効かと思います。一方で、先に代金を回収済みであり実際にサービス提供した際には代金は受け取りませんので、チケット販売からサービス提供までの期間が長くなる可能性がある場合には、注意が必要になります。
損益計算及び税金計算においては、代金受け取り時には前受金として売上計上はせずに、実際のサービス提供時に売上を認識し、利益の計算や消費税の集計を実施することになります。また、ベンチャー企業の場合には月次でチケット残数までを集計して会計処理出来ていない場合も多く、期中では入金額を売上として認識すると共に決算時にチケット残数を一括反映している会社も多いかと思います。その結果期中での損益計算書からの収支予測が、実際の決算時に大きくずれる可能性がありますので、注意が必要になります。
前受を多く実施している間は、資金繰り的に非常によく見えるので、手元資金に対して納税額は非常に小さく見えると思います。一方で、前受金が減る方向に動き始めると、資金の減少に対して納税額が多額になる現象が起きてしまいますので、納税額を伝えられた際に、驚く事も多くなるかと思います。
・設備投資による消費税額の変動
BtoCサービス業では、急激な業績の増減が少ない旨で記載しましたが、多舗展開等事業の急拡大を狙う事がしやすいのも特徴になります。各拠点毎に安定を確認しやすいので、同じ形式での展開にも向いている形になります。
多店舗展開をすると、設備投資や広告宣伝費等多額の支出が発生します。この設備投資について、借入をして実施する又はリース契約などにより実施する事が多いため、設備投資時に手元資金を多額に支出することは少ないのではないかと思います。
そして、設備投資時には消費税を乗せて支払っているため、設備投資を実施した年は消費税の納税額が大幅に削減される傾向があります。
こちらが、体感としての利益と消費税の納税額を乖離させる要因となっています。下図のように、仮に前年度に新拠点の立ち上げを行った場合、前年度の消費税額は設備投資全額に対して発生した消費税額分の消費税節税効果が発揮され、本業からの消費税納税額が1,200であった場合そこから設備投資に含まれた消費税額1,000が控除され、納税額は200となります。一方で、翌年以降は借入金の返済が開始し、設備投資関連での支出が始まるものの、設備投資に伴う消費税の節税効果は既に教授済みですので、本業が同一水準とすると1,200の納税がそのまま発生する事となります。結果として本業の利益以外に発生する資金繰りとして、設備投資を行った前年度は△200に対して、当年度以降は△2,300分の資金繰りへのマイナス効果が発生することとなるのです。
前年度 | 当年度 | 翌年度 | |
設備投資額 | △11,000 | 0 | 0 |
借入金額 | +11,000 | 0 | 0 |
借入金返済額 | 0 | △1,100 | △1,100 |
設備投資関連支出 | 0 | △1,100 | △1,100 |
消費税額(本業) | △1,200 | △1,200 | △1,200 |
消費税額(設備投資額×10%) | 1,000 | 0 | 0 |
消費税納税額 | △200 | △1,200 | △1,200 |
資金繰り | △200 | △2,300 | △2,300 |
支出を△にて表示しています。
その結果、資金的にはマイナスにもかかわらず消費税額が高いと感じたり、去年に対して納税額が高いと感じる事が多くなってしまうことがありますのでご注意くださいませ。
・借入金
最後に、必ず出てくるのが借入金の返済額です。こちらについては、既に計算の中に含めている方も多いかと思いますが、借入金の返済額は経費ではないと共に消費税の納税額計算上控除出来るものではありませんので、借入金の返済額を超える利益が出ていない限りは手元の資金は減っていく傾向にあり、体感としては赤字と感じる事も多いかと思います。
特に、借入金の返済額に少し足りない利益が出ている場合には、法人税と消費税共に発生してきますので、体感としての赤字に対して納税額が高いと感じるケースになりますので、ご注意くださいませ。