税理士や経理担当者から試算表又は決算書を受け取った際に、損益計算書に表示されている利益の金額と、自身が把握している預金の増減が合っていないと感じた経験は有りませんでしょうか。また、合わない理由を確認してもその時は一時的に理解したものの、その後は『合わないもの』と位置付けて、会計と資金を切り離して考えるようになってしまっている方もいらっしゃるのではないかと思います。

今回は、合わない理由を改めて把握して頂くと共に、合わなかった時に確認すべき項目を解説したいと思います。また、ズレの原因は必要売上高の計算や資金繰りの改善、さらには今後の資金計画に大きく影響する事項でもありますので、是非スッキリと整理するのに役立てて頂けると幸いです。

前回の記事で全般的な事項を記載させて頂きましたので、こちらでは業種別の事例を交えた解説を実施して参ります。もし、こちらの記事が分かり易いと感じて頂けた方には、是非前回記事にて大枠のお話もご確認頂けますとよりイメージがつかみやすいかと思います。

会社の利益と預金が合わない 導入編

<前提>

BtoCサービス業として、一般顧客に対するサービスを組織として提供する事業形態を想定しています。基本的にはサービスを提供するのは人という前提でおりますので、BtoBのケースと近くは有りますが、売上の形態が大きく異なりますので、分類させて頂きました。

<掛け売上>

BtoCサービス業の場合、お客様は一般顧客になりますので、現金での受取、クレジットカード決済、その他キャッシュレス決済の他、チケット販売、集客代行会社経由入金等の売上形態が想定されるかと思います。

現金売上ですと、利益と預金残高の増減は一致しますので、確認事項は無しで済みますが、クレジットカードや各種キャッシュレス決済の場合、どのサービスを利用するかによって、利益と預金残高には大きな乖離が生まれる可能性があります。

こちらは、どのサービスを利用するかを決定する際にも重要になりますが、利益と預金の関係に関していえば、締日から入金日までの日数が影響する事となります。最近ですと、最短決済日の翌日というサービスもあり、その場合には、当日の売上代金を翌日の支払いに充てる事も理屈上可能となりますので、影響は非常に小さくなります。一方で、従来のクレジットカード決済のように、月末締め翌々月5日入金のような形の場合、例えば、4月1日の売上分は4月末締めで、6/5入金という形になりますので、最長で売上日から2か月以上後に入金される事となります。すなわち4/1の売上を獲得する為に要した仕入や人件費等の支払よりもはるか後に入金されるため、運転資金として最低でも2か月分の預金残高が無い限りは、資金繰りは非常に苦しくなります。

色々な支払手段を検討される場合には、手数料や操作のシンプルさ等も重要ですが、是非こちらも念頭に入れて頂きつつ、現在のサービスで資金繰りに苦しさを感じている方については、積極的に自社に合ったサービスへの切り替えを検討するのも良いかと思います。

また、集客代行会社経費の場合、お客様は一旦代行会社へお支払いをし、代行会社から手数料(広告費等を含む)が差引かれて入金される形もあるかと思います。この場合には、この場合には、その分入金が遅くなりますので、利益に対して預金残高はマイナス方向へ働きます。中には、入金までが長期のもの、例えば月末締め翌々月等の場合もありますので、支払タームは確認しておきましょう。

<前受金>

回数券チケットのような形で、サービス提供前に代金を頂く場合も有るかと思います。先立っての入金になりますので、資金繰りには非常に良い影響を与えますが、その後、売上時には入金が無い、また割引で販売されているかと思いますので、その分入金合計は少なくなるという点にも留意が必要です。

回数券等の内、お客様が手元にお持ちで未使用分については、会計上は前受金として処理されますので、その残高がいくら残っているのかと、前受金の残高の増加分、利益よりも預金残高は増えているはずですが、その前受金をゼロにするには、その残高分利益よりも預金残高が減少するという点にご留意くださいませ。

<掛支払>

BtoCサービス業の場合には、支払としては人件費や外注費が主な経費になりますので、締日から支払日までの間に1か月以内の期間があることが通常かと思います。その場合、期末に残っている未払金分は、支出はまだしていないものの経費として計上されているものになります。利益に対して資金繰りに与える影響としては、未払金又は未払費用の残高をご確認頂ければ把握可能ですので、残高が増えていれば、利益よりも預金残高の増加は大きくなっているはずです。

広告宣伝費等は多額に発生する可能性も高く、クレジットカード決済可能なものも多いかと思います。クレジットカード支払による、口座引落日までの期間も同様に未払金としての効果が出ますので、限度額にお気をつけ頂きながらご利用頂ければと思います。

<設備投資>

BtoCサービス業の場合店舗の内装工事代や業種毎のシステム開発等の設備投資が出てくるかと思います。設備投資を行った場合、会計上は支払時に経費には出来ずに、固定資産として計上して減価償却を通じて一定期間で按分して経費処理を行います。

基本的には1つ10万円以上のものになりますが、会社の状況に応じて複数の会計処理方法からの選択が求められている箇所でもありますので、貸借対照表の残高で増減を把握して頂ければ増加した分は購入して支払ったけど、まだ経費には計上していない分、つまり今後長期間をかけて経費としてタイミングのズレが解消していく分になります。

なお、前の年に購入したモノで固定資産に計上した分については、逆に、支出は今期は無いものの、減価償却費として経費になるものですので、こちらは支出は無く経費になったものとして、利益を小さく、預金を大きく見せる方向に当初のズレの解消へ働いているモノとなります。

なお、融資を受けて設備投資を実施した場合、毎月の会計上の損益では、借入金の返済分利益よりも預金残高が減少するのに対して、設備投資の減価償却分は利益より預金残高が増加するという関係にありますので、毎月の返済額と減価償却費のどちらが大きいかは把握されておいた方が良いかと思います。

<借入>

設備投資時に借入を行っている場合には、借入金の入金分は利益よりも預金残高の増加は大きくなっていますが、その分、返済時には利益よりも預金残高を減少させる方向に働く事となります。

借入金の返済分については、毎月の必要利益計算上、利益にプラスで獲得できるように考慮事項に含めておく必要があります。

<前払>

前払をする取引としては家賃や、年間契約したサービス等が多いかと思います。これらについては、会計処理方法によっては前払として認識しない事も一定の要件の元認められていますので、該当取引があっても必ずしも該当しないかもしれませんが、仮に何か多額の前払いが有った場合には、前払金又は前払費用の残高をご確認頂き、それが増えている場合は利益に対して預金は減少し、減っている場合利益に対して預金は増加している事になります。

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