法人の納税に関しては、様々な考え方の社長様がいらっしゃいます。少しでも安く抑えたい、利益が出たのであれば納税は仕方ない、日本国民として出来るだけ納税したい(マイノリティ)、等など
この度は、節税対策にとらわれすぎて、結果納税額は抑えたものの、会社の預金残高がむしろ減ってしまうケースを含めて、節税対策を考える際に必ず押さえて頂きたい事項を記載していきます。なお、架空経費や、グループ間での利益の付け替え等脱税に分類される内容は含まず、あくまで節税の範囲内での記載になります点ご了承ください。
①支出を伴う場合、必ず節税額よりも支出額の方が大きくなる
法人の税金は、利益に対して課されます。従って、例えば節税目的で1,000の経費を支出した場合、利益がその分下がりますので、仮に税率40%にて計算すると節税額は400となりますので、600は追加で支出したことになります。
1000 | 400 | ||
600 | |||
この1000がいずれにせよ購入する予定であったものの場合、600で購入出来ましたので、400(40%OFF)で購入できたと考えることが出来ます。一方で、本来購入予定ではなかった経費の場合、追加で支出した600に対して満足度が見合っているかどうかでの判断になりますが、法人の事業活動の観点からは合理性は低いと言わざるを得ないかと思います。
そこで、支出を伴う方法での節税については、まず、来期支出する予定であったもののうち、支出の時期を早めることが出来るものが無いか、そしてそれの利用開始を決算日前としても損はないか、から考えていただく事をお勧めします。
②支出はしていても一括経費にならないものも多いため要注意
例えば、元々買い換えようと考えていたPCを決算前に買い換えてしまおう、と考えた場合、こちらは必要なものかと思いますし、仕事の効率も上がることが予想されますので、支出の内容としては合理的です。ただし、10万円を超える物品の購入については、固定資産としてどのように処理するかの観点がありますので、要注意です。
また、年間契約のライセンス等利用期間が翌期以降にかかるものについても、支出時の経費とする為には要件が定められていますので、注意が必要です。
仮に必要なものであっても、決算前に追加で購入又は支出するものを一覧にして顧問税理士に確認してもらうことがベストかと思います。
・要注意事項
10万円を超える物品の購入
納品又は使用開始が決算日移行になる支出
修理等の場合
税理士への確認や納期の観点から決算日の1か月以上前には検討を始める必要があるかと思います。
③認められている方法を実施しているかを先に確認
・役員社宅
・倒産防止共済
・短期前払費用
・従業員への決算賞与
④消費税と法人税の仕組みの違いの理解
顧問税理士は、上述のような形で、節税対策予定一覧を受け取ると、法人税の節税になるか、消費税の節税になるか、又は両方の節税になるかで分類して考えます。ここまで、利益を中心として記載して来ましたので法人税の節税を中心に記載しましたが、消費税の節税については、少々異なります。
例えば10万円を超える備品を購入し、減価償却を通じて数年間で経費になるものであっても、消費税については購入時に節税効果を発揮します。逆に倒産防止共済等の保険や共済に関わる支出は消費税を課されていませんので、消費税では節税効果は発揮しないことになります。
そしてさらに、創業後2,3年の場合に多く該当しますが、当期が消費税免税事業者で、来期が消費税課税事業者の場合、当期に利益が残ってしまっていても来期に購入した方が、消費税の節税効果を大きく受けられるので、有利になることもありますので、合わせて税理士への確認をおすすめいたします。
前期(免税) | 当期(免税) | 来期(課税) | ||
1100×40%=440 | 1000×40% +100 =500 |
⑤節税対策は一部を除くとあくまで繰延との理解
上述の通り、節税の多くはあくまで先の経費を今期に取り込む性格のものが多くなっています。従って、当然に来期以降の経費が少なくなりますので、来期以降も利益が出続ける場合には、今期に実施した節税は長い視野では意味を持たないものとも言えます。ただし、事業を続けるうえで常に利益が出続ける会社は稀という点と、一度納税した税額はその後の損失と相殺して還付を受けることは出来ませんので(一部、1年前の納税額について繰戻還付の制度はあります)。そこで、手元資金を多く残すということは経済合理性の観点からも重要ですので、こちらの観点から実施していただくことが合理的といえるかと思いますので、最初に記載した通り、支出額を超える節税効果は出ない、という点を頭の片隅においておいて頂けると幸いです。