そもそも会計って何の為につけるのか
いかなる業務であっても業務の効率化を検討するにあたっては、目的を明確にする必要があります。そこで、一度立ち返って今効率化を目指している業務の目的を明確にしていきましょう。
会計という言葉の範囲は実は非常に広いですが、一般的に中小企業の場合ですと、
- 税務申告
- 銀行融資
- 業績把握
に絞ることが出来ます。
- 税務申告
法律上で定められた義務になりますので、必ず実施しなければならないものになりますので、目的から外すことが出来ないものとなります。また、税務申告書及び添付資料となる決算書は、中小企業の場合『唯一外部へ正式に提出している資料』になりますので、税務署の収受印(現在は電子申告なので、メール詳細が該当します)がある税務申告書は、金融機関からの借入時や賃貸契約その他信用を伴う契約を締結する際には、提出資料として必ず求められるものになります。
一方で税務申告に関しては、年一回決算月の翌月1日から決算月末までの1年分を集計して実施する形になりますので、目的を税務申告のみに絞る場合には、年に1回、1年分を集計すれば目的は達成できることとなります。
実際そのような形で年に1回のみ会計数値を把握している会社も多くありますが、社長が自身である程度の業績や資金繰りを把握出来ている場合になりますので、社長自身で支払いや請求も実施している、社長1名の会社であることが多くなります。
- 銀行融資
会社経営において金融機関からの借入は非常に重要なファクターになります。最初は借入自体を嫌う方も多くいらっしゃいますし、考え方としては正しいですが、事業の拡大時に必要となる資金を利益で貯蓄する間にチャンスを逃してしまう可能性や従業員等が増えてきた場合には、万が一の時に備えて手元に資金を残しておきたいものです。結果として会社経営と銀行借り入れは避けて通れないものとなります。
では、銀行融資に際しては、上述の通り税務申告書及び決算書が提出資料となりますので、決算直後に借入を申し込むのであれば、①税務申告の目的さえ達成されていれば、同時に要件を満たすことになります。一方で、会計期間の途中で借り入れを申し込む場合、前回の決算から申し込み時点までの業績の提出を求められる形になりますので、その際には会計数値である試算表を提出することになります。
この場合には、年1回の決算とは別にある程度の頻度で試算表を作成しておくか、又は提出が必要になる際に該当月までの分を緊急で作成する必要が出てきます。
税務申告に関しては税理士に依頼する事が通常かと思いますので、その際に1年分の帳簿作成を依頼している場合、該当月までの試算表をすぐに作成してもらえるかどうか、また、その場合の報酬がいくらになるか等、検討が必要な事項が出てくる形となります。
資金にある程度余裕がある場合でしたら、次の決算まで待った方が手間としては楽になります。
- 業績把握
社内に経理の方がいる場合や、それなりの金額で記帳をアウトソーシングしている目的としては、毎月の会社の業績を正確に把握する事が目的となります。毎月の売り上げに対して経費がどれだけ掛かっているか、利益は出ているか、という点が最初の目的になりますが、その経費や利益に対して翌月以降で増やす減らすの判断や追加採用の要否等、経営判断に必要な情報を把握する事になります。
また、実際の資金の動きと経費等の発生はタイミングがズレる事が一般的ですので、該当月の経営としての実績と今月の資金の動きとをそれぞれ把握する事が必要になってきます。こちらをどこまで厳密にかつ分かり易く把握したいかどうかで、試算表のみの作成から、必要な情報をまとめたレポートや、キャッシュフロー計算書を作成したり、翌月以降の見込みを加えて事業計画を作成したりすることもあります。
こちらも、上述の通り社長1人で入金、出金、営業活動を管理している場合であれば、厳密に作成せずとも頭の中で把握されることが可能ですので、必ずしもすべての会社に必要という事にはなりません。
以上よりまとめると以下の表のようになります。
税務申告 | 銀行融資 | 業績把握 | |
義務 | 有り | 無し | 無し |
必要頻度 | 年一回 | 年一回 + 不定期 | 毎月 |
規模 | 小 | 中 | 中、大 |
もちろん①税務申告のみを目的としつつ、会社のステージに応じて3か月に1回程作成して業績を把握するようになり、規模が大きくなり社内の関与者の増加に伴い③に力を入れる、という形が一般的になります。
試算表って何だろう?
上記目的から分類した会計が必要になる状況ですが、銀行融資の時や業績把握等の時に『試算表』という言葉が必ず出てきますので、内容を簡単に説明させて頂きます。
非上場会社を前提とした中小企業において、試算表とは、会計ソフトへ会社の会計情報を入力した結果出力可能な、会社の暫定決算書の位置付けになります。決算書は最終的には株主総会の承認を経て税務申告の元データとして税務署へ提出したり、金融機関へ提出したりと、対外部への報告に用いられますが、試算表はあくまで承認等を経ていない内部資料になります。
金融機関から求められて提出することはありますが、あくまで暫定的なものとして金融機関側も捉えているかと思います。
では、試算表の構成を見てみましょう。試算表は、貸借対照表と損益計算書の2つで成り立っています。
試算表の画像
決算書についてくるような、株主資本等変動計算書は、貸借対照表に内包されている状態となっています。株主資本等変動計算書は資本取引を反映するものですので、会社の業績把握には用いないことから、ここでは詳細の解説は割愛させて頂きます。
さて、それでは貸借対照表と損益計算書についてですが、試算表を見るにあたっては、上述の通り決算前の暫定的な情報になりますので、何月分までが入力されているかによって、対象月までで絞って表示させる事が通常になります。こちらは、会計ソフト上で対象月を絞って出力することが可能になっています。
貸借対照表は会社の財産状況を、損益計算書は会社の今期の業績を表すものと考えて頂けると分かり易いですが、会計上の貸方、借方の話がありますので、少し見ずらいと感じるかと思います。
そこで、試算表の見方関連の記事の中では損益計算書は『月次推移』の形でのご確認をお勧めしておりますが、一般的には、こちらの貸借対照表と損益計算書のセットで試算表と呼ばれ、金融機関から提出を求められたり、業績把握の元データとなります。
※月次推移画像
記事リンク